2019.11.05

経営戦略史

 
 
はじめに
 
 
以前ビジネスモデルに関する記事を記載いたしました。その後多くの反響を頂いたのですが、私も元々経営コンサルタントの端くれですし、せっかくなので経営戦略史について論じてみようと思います。
 
 
皆様も史学観点から「ビジネスモデル」を捉えた方がより輪郭が明確になると思います。
 
 
経営戦略とは?
 
 
まず経営戦略とは何でしょう?読んで字のごとくですが、学問における定義としては「勝ちパターンを習得し、成功を再現する事」です。学ぶ事は手段であり、手段の先にはあくまで「同じような成功を収める」という目的があるはずです。
 
 
経営学には他の学問と同様に帰納法という手法が使われています。例えば成功している企業を100社調査し、3つの共通項があったとします。これがシンプルに勝ちパターン(学説的にはフレームワークと言います)として世に放たれて、多くの経営者はそれを鋳型として自社に当てはめて成功につなげます。
 
 
今回は経営戦略史をこのフレームワークを軸にストーリーとして論じてみたいと思います。なお、経営学の論文に近いアプローチの内容がありましたので内容が少し重複する事がありますのでご了承ください。
 
 
ストーリーで語る経営学
 
 
~経営を山登りに例えた天才たち~
 
 
時代は1800年代、経営学という学問は産声を上げました。当時は産業革命真っ盛りで企業と言えば労働者の扱いをどのように最適化するか、に日々悩んでおりました。まず最初に理論を唱えたのがテイラーという学者です。
 
 
いかすれば労働者は限られた時間の中で最大の生産を上げるのか。テイラーは科学的に管理する事の重要性を唱えました。(科学的管理論)要は基本的な手順を合理的・科学的な方法で定め、管理者の下で計画的に遂行されることによって、生産性を最大化し、能率的に作業をすることによって、生産性改善につながるという理論です。
 
 
しかし、この管理方法はストップウォッチを持って歩く時間をはかるといった人権を無視したアプローチの為、多くの工場でボイコットが起こりました。そこでメイヨーという学者が 「人の生産性は労働条件やプロセス改善だけでは決まらない 」として 「人間関係論 」を打ち立てました 。
 

 
 
賃金や労働条件ではないソフトな 「やる気 」が大切だと唱えたのです 。ロボットのような管理システムに人間が反抗したという構図ですね。
 
 
ここで違う流派が出てきます。20世紀初頭にフェイヨルという学者が「経営とは工場の生産性だけの話ではなく、企業全体の管理が大事だ」と主張しました。その後1920年代に世界恐慌が起き、工場の生産性どころか企業全体を管理しなければならないという論説は強く支持される事となりました。
 
 
バーナードという学者が経営を「山登り」に例え、どのようにその山を登るか、という手法論が経営戦略の主体となりました。
 
 
 
~山登りには2つの方法があった~
 
 
バーナードの山登りの例えに基づき、「上りやすい道を探す派閥」と「上りやすい方法を探す派閥」に分かれます。”道”派閥は端的に言えば、勝てる市場を探せ、という事ですね。彼らをポジショニング派と言います。
 
 
”探せ”派閥は端的に言えば、どの市場でも勝てる企業になれ、という事ですね。彼らをケイパビリティ(企業能力)派と言います。経営学は自然科学のように「光の法則は不変である」といった明確な解がない、いわば社会科学領域なのでどちらが正解という事もなく、今も両派閥は存在します。
 
 
~市場を見つければ良い時代~
 
 
ポジショニング派の巨人達は多岐にわたります。まず 「経営戦略はア ートだ 」としながらも一定の分析方法や構築手法を示したのが 、アンゾフ(アンゾフ・マトリックス)やチャンドラー(組織は戦略に従う)、アンドル ーズ(SWOT分析)でした。
 
 
その後、1960年代にコンサルティング会社の草分けであるボストンコンサルティングが登場し、ヘンダーソン(経験曲線・PPM)が活躍します。経済学を無理矢理経営学に取り入れた数字至上主義で大テイラー主義と呼ばれます。
 
 
テイラーの科学的管理論が超合理的だったのでその流派に基づいているという意味合いですね。その後ポーター(ファイブフォース分析、バリューチェーン)が1980年代この理論を強化しました。結論彼らは「儲かる市場を選び、そこで位置取り(ポジショニング)をする事が大事だ」と一貫して説いています。
 
 
~市場を見つけても勝てない時代~
 
 
でもそうして作った優位性がすぐ消えてしまうことに気づきました。ホンダ、トヨタ、キヤノンといった日本企業のせいです。みな難攻不落の城壁を乗り越えゼロックスやGMの尾牙城を侵蝕し始めたのです。
 
 
そこで市場ではなく「自社の企業能力上の強み」に立脚して戦略を作ろうというのがケイパビリティ派です。この理論を支えたのが今や飛ぶ鳥を落とすマッキンゼー・コンサルティングです。7Sというフレームワークでケイパビリティ派を支持しました。
 
 
また、ピーターズ(エクセレント・カンパニー)やハメル(コア・コンピタンス経営)、ハマー(リエンジニアリング革命)、ストーク(タイムベース競争戦略)が書籍の中で同じ事を主張しました。
 
 
これが1990年の事です。この時代においてポジショニング派も勢力を拡大しており、今のアメリカと中国のようににらみ合っている状態でした。
 
 
~仲良くしようよというコンフィギュレーション~
 
 
ここでコンフィギュレーションという「どちらも大事」派閥が誕生します。先ほどのアメリカと中国で言えば日本のようなものですね。状況に応じて戦略は組み合わせる事が吉という主張です。彼らは経営戦略は芸術であり、手芸品であると説きました。
 
 
要は二元論ではなく水物と。このあたりから学問としての限界が見えてきますね。そうです。経営とは状況に応じて変わってしまうものであり、絶対はないのです。ちなみにこの派閥はミンツバーグ(戦略サファリ)、キム(ブルーオーシャン戦略)などが代表的です。
 
 
~そんなことよりイノベ ーション~
 
 
1990年、そもそもどちらがどうとか悠長な事を言ってられなくなりました。イノベーション時代の到来です。経済学者シュンペーターの考えを踏襲し、ドラッガー、フォスターによって従来からイノベーションの重要性は説かれてきましたが、ITやハイテクの加速的進歩がイノベーションを助長しました。
 

 
例えば、デジタルカメラが台頭する中でコダックはポジショニングやケイパビリティなど論じる間に潰れてしまい、イノベーションを起こした富士フイルムは生き残りました。この派閥はクリステンセン(イノベーションのジレンマ)、ビジャイ(リバースイノベーション)が主流です。
 
 
ここで皆我に返り、山登りの方法が統一されたのです。全て巨人がぐうの音も出ないほどイノベーションの可能性が露呈したのです。
 
 
~やってみなくちゃ 、わからない ~
 
 
その後2000年代になり、経営学はより勝ちパターンの構築が難しくなります。いわゆるベンチャー企業は学説などを踏襲するよりも「まずやってみよう」の精神で大きく拡大を続けます。ここにフレームワークなんてものは既にありません。
 
 
amazon、Google、apple、インディテックス(ZARA)など先進企業は一般的な学説を無視し、自分たちでイノベーションスタイルを確立し、進むようになりました。リーンスタートアップ戦略(要はとにかくやってみる)とアダプティブ戦略(要はとにかくやってみる)が代表的です。
 
 
この結果、帰納法の勝ちパターンの確立が困難となり、ひとつひとつの成功企業がそれぞれのルールで成功しているといういわゆるビジネスモデル至上主義の時代が到来したのです。
 
 
最後に
 
 
以上が世界一ざっくりした経営戦略史です。当初はどの企業にも適応できた勝ちパターンがなくなり、成功企業がすなわち勝ちパターンの時代が到来したのです。帰納法という100社の成功の共通点を見つけるという所業が通用せず一社の成功ポイントをまとめるというビジネスモデル時代の到来です。
 
 
経営コンサルティング業の生業である「フレームワーク販売」も振るわず、残念なことにビック4と言われる世界的コンサルティング会社も今は「高級人材派遣業」に切り替わっています。優秀人材を派遣します!という触れ込みですね。
 
 
私たちもかつて大手コンサルティングファームに属しておりましたが、コンサルティング業界自体も以前のような人気職種ではなくなりつつあり、優秀人材はみな前途した試行錯誤型ベンチャー企業に流れています。
 
 
ここで伝えたいメッセージとしては「絶対法則は無くなった」という事です。私たちもデジタルマーケティングのプロジェクトを多く遂行しておりますが、全てがうまくいくとは限りません。マーケティングは経営領域で特に水物で予測不可能な失敗も多くございます。
 
 
ただ、そこで足を止めるのではなく、一ベンチャーから世界的巨大企業となったamazon、Google、apple、インディテックス(ZARA)などのようにチャレンジし続ける事が重要なのです。
 
 
私たちが成果コミット、明瞭価格、返金保証を謳っている事も成功を約束しているからではなく、成功へのチャレンジを行いやすくしているからに他なりません。是非今一度自社の取り組みを振り返って頂き、「自社はチャレンジできているか」と問いかけて頂けると良いかと思います。
 
 
もしかしたら皆さんもGAFAのように世界屈指のイノベーター企業になるかもしれません。その一助になれれば幸いです。