2020.01.26

自社の売上を3倍にする「競争戦略」とは?

 
 
はじめに
 

 

~コトラーとポーターの学説の違い~

 

 

以前、コラムにて経営戦略史について触れました。経営戦略は歴史は浅いですが、多くの学者がさまざまな流派を生み出し、その事で社会や経済が発達してきたと言えます。コラムでも述べましたがその中でもコトラーとポーターは経営学の礎を築いた2大学者です。それぞれが提唱した学説を皆様はご存知でしょうか。コトラーは3C、STP、4Pです。本コラムで最もよく登場するフレームワークですね。

 

 

ではポーターは何かご存知でしょうか。代表的な理論は「(ファイブフォースをベースとした)競争戦略」です。この競争戦略は中小企業の戦略策定にも大きく役立つ理論ですので簡単にご説明していきたいと思います。

 

 

〜競争戦略の概要〜

 

競争戦略と言えば下記のような図で説明されることが多いです。皆様も見たことがあるのではないでしょうか。

 

 

 

 

簡単に言えば「企業の戦略は商品が安いか、差別化が出来ているか」に分けられるという考え方です。自社の展開がこのどちらかからはみ出ていると企業は「儲からない」という考え方です。(この状態をスタックインザミドルといいます)

 

 

〜競争戦略は10年後を見据えること〜

 

 

このように競争戦略は言わば企業の戦略オプションを策定することになります。ここで一つ大きな疑問が生じるのではないでしょうか。ポーターの3C、STP、4Pとの位置関係です。こちらについては諸説ありますが、私たちは以下のように捉えています。

 

 

 

 

要はコトラーの理論は3年後を見据えた戦略であり、ポーターの理論は10年後を見据えた戦略なのです。こちらについては後ほどまた触れますので一旦次に進みましょう。

 
 
競争戦略策定の流れ
 
 
~競争戦略は「分析」「戦略オプション策定」「検証」「実行」である~
 
 
まず競争戦略を策定するにはどのような流れが適切なのでしょうか。結論から言いますと「分析・戦略オプション策定・検証
・実行」の流れとなります。ここからは競争戦略の構築方法を事例を活用して説明して参ります。
 

その① 分析


〜内部一貫性と外部一貫性〜

 

まず抑えていただきたいのが競争戦略が「未来の市況を予測して戦略を構築する」という事です。コチラの記事にも書きましたがポーターは市場に沿って戦略を構築する、という派閥の学者です。その業界が今後どうなるか、から逆算する事を主としております。ここで市場の未来を予測する必要が出てきます。これが有名な「ファイブフォース」です。ファイブフォースとは企業における脅威を5つに分けて分析する手法です。ファイブフォース、そのままですね。

 

 

ファイブフォースを具体的に言えば業界、買い手、売り手、代替、新規参入です。ここでは用語の説明をするより実際のケースで説明した方が良いでしょう。それぞれをTOYOTAを引き合いに見ていきます。あなたがTOYOTAの社長だとします。企業運営において様々なリスクを抑えないといけませんが、先程の5つの脅威を見ていきましょう。まずは業界の脅威です。これは言わば競合の脅威を指します。日産やホンダ、その他自動車メーカーですね。

 

 

次に買い手の脅威。買い手は実際に自動車を購入する消費者を指します。ここでは買い手の「交渉力」と理解してください。一般的には他社と商品の差別化が出来ていない場合は買い手の交渉力は高まります。言い方を変えれば消費者に商品の選択肢が増えれば買い手の交渉力は増します。自動車業界は強者一強ではないですから買い手の交渉力は高いと言えます。

 

 

売り手は部品などを販売する業者を指します。売り手も同様に交渉力と捉えると業界にとって部品の売り先が増えれば交渉力は高まります。続いて代替品。これは読んで字の如く自動車にとって変わるものです。同じ乗り物で言えばタクシーやバス、果ては自転車なども代替の脅威と言えます。最後の新規参入ですが、これもそのまま新規参入の脅威です。

 

 

なお、ここで指す業界の捉え方は非常に重要です。TOYOTAの例を出しましたが業界の定義についてはファーストフードが分かりやすいので事例を変えます。マクドナルドにおける業界の脅威、言わば競合はどこでしょうか?モスバーガーなどハンバーガーチェーンでしょうか?もちろんそうですがそれ以外にもコンビニや吉野家などは対象になります。ファーストフード(手軽に食事が取れる)という意味ではUber eatsも入るでしょう。業界の定義は「顧客が一括りに捉えるか」が軸となります。

 

 

これが企業における5つの脅威ですが、今のままでは考察が非常に弱いと言えます。この点を補強する考え方にPESTという視点があります。これは5つの脅威を政治(politics)、経済(economy)、社会(society)、技術(technorsy)で見るという考え方です。

具体的にTOYOTAのファイブフォースをPESTの観点で見ると下記のようになります。

 

 

特筆しますと政治においては自動運転などの法律が大きく改正されようとしている点、シェアリングエコノミーのトレンドが盛り上がり、社会が大きく変化しつつあります。技術で言えばAIを中心とした技術革新が日々行われています。ここで改めてファイブフォースを見てみましょう。

 

 

 

 

より脅威が浮き彫りになりましたね。簡単に言えばTOYOTAの市場環境は「AIの台頭により業界の技術格差が大きくなる、Uberなどによるライドシェアサービスが代替サービスとして脅威になる、技術レベルと革新スピードの早いテスラなどベンチャースタイルの企業が新規参入の脅威を加速させる、といったところでしょうか。

 

 

競争戦略においてはこの点を踏まえて戦略を構築する必要があります。外部環境を見た次は内部環境を見る必要があります。内部環境については様々な捉え方がありますが、ここはコラムですので簡単に下記で設定しましょう。

 

 

 

 

なお、MBAなどではここでPMD、7Sというフレームワークを使うことが多いですが、デジタルスペースのフレームワークで進めます。ここまでで外部環境と内部環境が揃いました。先程お伝えしたように、競争戦略は未来の市場環境に沿って戦略を策定します。ですので外部環境と内部環境は「未来の市場」と「今の自社」のズレを発見することと言えますね。ここではSWOT分析というツールが便利なのでSWOTを使いながら説明いたします。

 

 

 

上記の通り、自社が展開すべき方向性としては「AIを駆使したモビリティ産業」という方向性になりました。ここで先程の戦略オプションを見てみます。明らかに低コストではなさそうですね。位置づけとしては集中戦略が良さそうです。今のTOYOTAはAIを中心としたスタートアップを買収し続けることによりAIに特化した技術体制を構築し、来る自動運転の時代に備えた商品開発に特化することが賢明と言えます。

 

 

その②戦略オプションの策定

 


〜戦略オプションを決める〜

 

 

ここまで来てやっと戦略オプションが明確になりました。ある程度のロジックをもとに正しく戦略を作ることで未来の脅威に即した事業体を実現することが出来るのです。各自動車会社をプロットするとこのようになります。各社分かりやすく戦略オプションを構築しているのが見て取れますね。

 

 

 

ちなみにこの戦略オプションは近年通用しなくなってきております。というのもこれら戦略オプションの域を超えた最強のビジネスモデルが多く誕生しているからです。上記の図をご覧ください。下記はコストとパフォーマンスを表した図になります。全ての企業がこのアーチの中に位置づけられます。先程の自動車企業で言えばこのようになりますね。

 

 

しかし近年これを超えた企業が存在します。GAFAやBATなどがそうですが、卓越したビジネスモデルにより安くもパフォーマンスが高い高収益企業が増えています。この領域をエフィシェントフロンティアと言います。

 

 

その③ 検証

 


〜検証の4ステップ〜

 

 

 

 

そして、ここからが「検証」となります。検証には様々な観点がありますが平たく言えば①真似されないか②リスクはないか③どのような期待効果が考えられるか④企業価値はどのように変化するかなどがあります。ここでは戦略論としての概要を目的としているので深くは触れませんが、このような検証フェーズがあるということだけ認識ください。

 

 

その④ 実行

 


〜実行フェーズにおいて3C、STP、4Pを使っても良い〜

 

ここまで来ればあとは戦略を実行するのみとなります。実行フェーズは日々の企業活動そのものですが、3Cなどを使いマーケティング戦略を行うこともここに位置づけられます。少し無理があるかもしれませんが、ここでポーターとコトラーのフレームワークの両立が可能です。

 

 

最後に

 

 

以上が世界一簡単な競争戦略論です。競争戦略は時系列を含めるとかなりロングスパンの戦略となり中小企業には敬遠される傾向にあります。たしかに壮大すぎてピンとこないことがあるかもしれません。しかし、今市場が大きく変化しようとしているこのタイミングで未来の市場変化を予測し、自社の戦略を見直すことが求められていることもまた事実です。このコラムが皆様の戦略策定に役立てば幸いです。